明治期名古屋絵付けの先駆者と言えば、松村九助と滝藤萬次郎であることに異を唱える人はいないでしょう。滝藤は弘化4年愛知県に生まれ、安政4年僅か11歳の時に名古屋で陶業の世界に入りました。以来、多くの苦難を経験しながらも、明治20年代には名古屋の東工場・西工場・中工場に75名の画工を抱えて、安井如苞などの一流の本画家とも契約をしていました。名古屋絵付けでは松村九助と並ぶ双璧と言っても良い滝藤萬次郎ですが、実はその銘の入った作品はそれほど多くはありません。というのも、滝藤の顧客は森村組・井村彦次郎などの大手陶商や、ヴァンタインなどの欧米商社であり、それら顧客の銘を入れたOEM生産が主力であったためです。出展の品は技巧の高さから、陶画工ではなく本画家による絵付けではないかと推測します。愛知県は日本で一番社寺の多い県らしいですが、出品の品も愛知県の社寺をモチーフにしたものです。一枚だけ社寺名が判然としませんが、それ以外の9枚は全て描かれた社寺名が裏面に滝藤の銘と並んで記載されています。一枚ずつバラで販売する方が売りやすいのですが、滝藤萬次郎の社寺シリーズ作品が10枚揃うことは先ずありませんし、愛知県の文化財保全の観点からもまとめておく方が良いかと思い、10枚揃いでの販売と致しました。実際、それぞれの絵皿に描かれた社寺の姿と現在の姿があまりに違うので驚きました。郷土史料としても貴重ではないかと思います。皿の寸法は直径22cmの七寸皿です。素地は瀬戸で作られたものですが、この手の絵皿は非常に薄く、小さなカケや僅かなニュウなどは仕方ないものですが、この10枚については、小さなカケもニュウもなく全て瑕疵のない完全な状態です。見込みの金彩に多少の使用痕は見られますが、裏面の銘や画題なども綺麗に残っています。稀に見る保存状態の良さと言えるでしょう。裏面の銘や画題の写真やそれぞれの絵の部分拡大写真等を添付したいのですが、メルカリ出品の写真が十枚に制限されていますので、何卒ご了解下さい。尚、最近、私の写真や説明文をそっくりそのまま盗用して、格安で販売するという詐欺サイトがいくつかあるようです。私はオークションサイト以外には出品しておりません。くれぐれも騙されないようにご注意下さい。
商品の情報
カテゴリー | その他 > アンティーク/コレクション > 工芸品 |
商品の状態 | 目立った傷や汚れなし |